第23回女性労働セミナー2008に参加して
 

        
鵜沢 由美子   

 
 2008年8月2日、東京の昭和女子大学オーロラホールで、第23回女性労働セミナー2008が開催された。テーマは「雇用平等VS雇用破壊―日本とEU―」。参加者は139名と昨年に引き続き盛況で、講演のみならず、現場からの報告、訴えで構成された今年のセミナーは内容も盛り沢山、たいへん活気のあるものであったといえるだろう。
 午前の部、基調講演では「EUの雇用平等・ジェンダー主流化の最前線」をテーマに柴山恵美子さんにお話をいただいた。ご自身の研究の原点に関わるお話から始まり、EUの歴史、雇用の場におけるジェンダー平等がEUの法律や指令などによって、持続的に着実に推し進められてきた過程などを豊富な資料をもとに力強くお話し下さった。そして、日本企業が続々とEUに進出している現在、ジェンダーの主流化が当然であるEUの諸現場とジェンダー・バッシング/パッシングの認識でいる日本企業の雇用者側との軋轢が生まれているとのご指摘が非常に印象に残った。「EUの取り組みを、日本の経営者(多くは男性)こそが学ぶべし」とのお言葉には深く頷かされるものがあった。そして、何よりの私の感想は…「サミットの議長国になったりするより、EUに入れてほしい!」という叶わぬ願いそのものであった。同時に、「EUは、あれほどの国が集まりながら、外部からはジェンダーの主流化に対して確実な意志を持っているが如く見えるのは一体なぜなのか」という疑問が浮かぶのを禁じえなかった。
 セミナーで午前中司会を務めていた私は、「もっとお話を伺いたい」「でも、私にも疑問が浮かぶように、皆さんもそうだろう」という思いに千々に引き裂かれつつ進行をどうすべきか悩んでいた。結果、ご用意いただいたお話は拝聴し、お一人からの質問のみを受けるというように欲張ったが、皆様の貴重なお昼休み時間を減じさせる結果となってしまい申し訳なく思っている。
 次に、午後の部ではパートTとして脇田滋さんに「雇用破壊:派遣・請負の働き方の現実“氷点下の世界”からの脱出」というテーマでご講演いただいた。まず、第一部で正規労働者にも長時間・過密労働が広がる一方で、低賃金の非正規労働者が急増している実態、派遣労働の問題点、その背景としての日本的雇用慣行が語られた。そして、派遣労働法が男女雇用機会均等法と抱き合わせで改正され、その後の女性労働の二極化の原点であったことが示唆された。第二部では、世界の働くルールからみて、いかに日本の状況は異常であるかが示され、企業別労働組合であることの限界が指摘された。第三部では、企業別の限界を乗り越え、産業別組合への転換の動きを見せ、非正規保護法を成立させたお隣、韓国の動向が語られ、光明を見る思いがした。豊富な資料を基に、たいへん説得的なお話だった。
 続いて、現場からの報告として、現在は女性ユニオンの書記長をされている藤井豊味さんと首都圏青年ユニオン組合員の冨岡典子さんが派遣労働の経験についてお話し下さった。藤井さんは派遣労働の現場で感じた「怒り」について提示され、冨岡さんは首都圏青年ユニオンの山田さんとの質疑応答の形式でお話をして下さり、現場の臨場感あふれるお話が先の脇田さんのお話とあいまって、派遣労働の問題点の理解を深めてくださったように思われた。
 最後に今年度初の試みとして、パートU「私の訴え!アピール私の職場・私の運動」に七人の方が参加、ジェンダー差別と闘う裁判や運動のお話を熱っぽく語って下さった。どの方も五分という時間では到底おさまりきれない思いと経験をお持ちだったが、この試みはとても好評で今後も継続が検討されることだろう。
 以上、全体を振り返り、とても充実したセミナーであったことがご理解頂けるかと思う。それと同時に、新運営委員として皆様のご感想を拝読するにつけ、もう少しご質問を受け、議論を深める時間が必要であったかもしれないとの思いも有している。今後に活かすことができたらと思いつつ筆を置きたい。